はるのひととき
七氏のつぶやき&忘備録です。
カテゴリー「散る文」の記事一覧
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- 2025.03.30
花散らしを待っている
- 2025.01.29
2gの朝
花散らしを待っている
- 2025/03/30 (Sun)
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桜が咲き始める頃の春の曇天が好きだ
グレーの空に薄紅色の枝が風に揺れ始めると
君と再会したあの年を想い出すから・・・
・・・
あの日・・・
・・・
あの日・・・
街のブックストアで僕は地図を探していた
君はカバーのかかった文庫本二冊
人気のない棚を回りこんで
気付いたのは君の方が先だった
気付いたのは君の方が先だった
声より先に肩に手を乗せるなんて
君の積極的なアプローチ相変わらずだったね
互いに一人だったのは何かの理由?
互いに一人だったのは何かの理由?
久しぶりの笑顔に懐っこさを見つけて
時が戻る・・・
時が戻る・・・
すぐに会計を済ませると無言で二人、
駐車場へ歩いた
駐車場へ歩いた
互いに、悲しい別れをしたわけじゃない
だからこんな時は
少しだけまた遭ってもいいと・・・
少しだけまた遭ってもいいと・・・
春先の柔らかい陽に誘われて
桜を見に行こうと言い出したのは僕だった
車でCD一枚聴く間に
街外れの古い公園に着いた
桜を見に行こうと言い出したのは僕だった
車でCD一枚聴く間に
街外れの古い公園に着いた
蓮池と椿園と、池の周りの桜
移築された古民家
移築された古民家
季節ごとに色の変わる日本庭園
まだ四分咲きほどのおとなしい桜を眺めながら
少し歩いた・・・
池の端のベンチに座ってみる
少し歩いた・・・
池の端のベンチに座ってみる
カイツブリの潜る方を当てっこしたりしているうちに急に風が出てきた
柳の新芽も揺れはじめた
雲行きがあやしい
そんな天気が春らしい
「 折角なのに・・・雨になりそうだね」
風の中の雨の匂いは濃くなる
「 折角なのに・・・雨になりそうだね」
風の中の雨の匂いは濃くなる
古民家のカフェでお茶も飲まずに
引き返すことにした
引き返すことにした
車に戻る途中、夕立の様な激しい雨になった
周りの人達も慌ただしく駆け出してゆく
「広重の絵のようだわ」
って、君はノンキだ
「広重の絵のようだわ」
って、君はノンキだ
僕は上着を脱いで君の頭にかけた
僕たち二人は走ることもせず
そのまま雨に濡れて歩いたね
駐車場の車に駆け込むと君の髪
そのまま雨に濡れて歩いたね
駐車場の車に駆け込むと君の髪
濡れてウェーブがキツく巻いてたのが綺麗だった
ヒーターで曇った窓の中で
上着が乾くまでの間歌った歌を覚えている?
雨は別れの歌じゃない 今日は春の雨
「夢占いでは雨は"恋"のキーワードだよ」
雨は別れの歌じゃない 今日は春の雨
「夢占いでは雨は"恋"のキーワードだよ」
なんて真顔で言った僕のこと笑っていた君
雨音に閉じ込められて
倒し気味のシートに深く沈んだまま
君と僕で一曲を半分ずつ歌った
でも、今思うとやはりあれは別離の歌だったんだね
・・・
最近の桜は温暖化のせいか
色が薄くてどこか寂しい
・・・
最近の桜は温暖化のせいか
色が薄くてどこか寂しい
それとも、僕の方が歳をとったのか・・・
目に映るものの色が少しだけ褪せて見えるのは、もう遭うことのない君を忘れられないから・・・
満開の桜を散らす雨のことを
満開の桜を散らす雨のことを
懐かしい友人のように想う僕は
どこか少しひねくれたままで・・・
もう何度目の春なのだろう
もう何度目の春なのだろう
降り出しそうで降らないこの曇り空に
ひとり、雨の匂いを待っている
モウイチド アイタイ キミヘ ...
モウイチド アイタイ キミヘ ...
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2gの朝
- 2025/01/29 (Wed)
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「そろそろ捨てなくちゃ」
と思って
と思って
キッチンの戸棚を片付け始めた
お気に入りのカップでも スープボウルでも
揃いならそれはひび割れと一緒・・・
それはひとつでもなくふたつでもなく
ただの空っぽの器に過ぎない
使えないやつだ
ダンボールにポイだ
棚の一番奥に古いラベルの空き缶があった
棚の一番奥に古いラベルの空き缶があった
振るとカラカラ音がする
中から出てきたのは
銀のティースプーン
「こんなところにあったのか」
そう思いながらも
「これは僕のものじゃない」
そう思って悲しい
この部屋で初めて二人で過ごした日に
「こんなところにあったのか」
そう思いながらも
「これは僕のものじゃない」
そう思って悲しい
この部屋で初めて二人で過ごした日に
君が手土産に持ってきた紅茶の缶だ
あれから何度の朝を迎えて
いくつの夜をめくってきたのか・・・
朝が遅い僕に君が淹れてくれる紅茶は
朝が遅い僕に君が淹れてくれる紅茶は
さわやかで、溌溂として、柔らかだった
好きな色、好きな香り、好きな渋み
本当に好きだった・・・
けれど、いつしか僕はそれに慣れてしまって
けれど、いつしか僕はそれに慣れてしまって
「うん」とか「そう」とか
君に横顔ばかり向けて
カップの底まで飲み切らずに放置してた
僕は幸せの目分量を間違えていたんだ
・・・
今、僕は紅茶を淹れることができない
・・・
今、僕は紅茶を淹れることができない
茶葉をスプーンで量ってみても
蒸らす時間を砂時計で計ってみても
どんなに値の張るリーフを買ってきても
いつも君が出してくれた香りにならず
金属的な味しかしない・・・
だから僕はティーバッグひとつ2gの朝
だから僕はティーバッグひとつ2gの朝
マグカップに放り込んで
熱い湯を注いでも
そしてまた忘れてしまう
気付けば
気付けば
底の方で紅く溜まってる紅茶の色は
僕の後悔だ
冷めてしまった思い出の底で
動けないままの痛みの色だ
もう少し、ティーバッグはこのままで
もう少し、ティーバッグはこのままで
引き上げるのをためらう休日の朝・・・
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